2007年04月01日

お知らせ

このところ、こちらは若干話題に乏しくなってきたので(苦笑)、3月いっぱいをもちまして、独立したブログとしては更新をやめることにしました。以後は、MedioLogのほうで[古楽]というタイトルをつけてポストすることにします。ご愛読ありがとうございました。

投稿者 Masaki : 23:21

2007年03月24日

うーん、低迷?

なんだか今年に入って(というか昨年秋くらいからか)、古楽の環境は低迷。ひところに比べ、リリースされるCDもあまりぱっとしない気がする。コンサートちらしを見ても、古楽系はさっぱり。招聘アーティストの情報もさっぱり……。

こういう時には、やはり低迷したようなCDをゲットしてしてしまうもので、今回は久々に評価の低い1枚をあえてやり玉に挙げてみよう。トヌス・ペレグリヌスの演奏によるアダン・ド・ラ・アル『ロバンとマリアンの劇』(Naxos、8.557337)。普通に録音してくれればよいものを、なんか知らんが英語のつまらないやり取りを入れて、英語話者向けのドタバタ仕立てにしている。こういうのはライブでやる分にはまったく問題ないけれど(日本語でやるのだってあっていいほどだ)、録音ではやめていただきたい(と心底思う)。仏語の台詞も英語アクセントで棒読みという……(映画などで、英語話者の音読するラテン語もこれに近いものがあったりするのだけれど)。肝心の歌のパフォーマンスもなんだか一本調子で、メリハリや情感も感じられず、何がやりたいのか意味不明な感じも。ちょっと勘弁していただきたい。

というわけで、久々に厄払い的に毒づかせていただいた。これはまったくもって買いではない。ジャケット絵はアダン・ド・ラ・アルの著書(13世紀)の15世紀の写本(の19世紀のファクシミリ版)からの挿絵なのだけれど、なんだかもと絵(↓)が泣いているぜ。

adam_d_la_Halle.jpg

投稿者 Masaki : 23:24

2007年03月11日

ロベール・ド・ヴィゼー

このところの1枚は、パスカル・モンテイレのテオルボによるロベール・ド・ヴィゼー『テオルボ組曲集』(ZZT051101)。テオルボ・ソロの組曲(ト短調、ロ短調、ヘ長調)のほか、それぞれヴァイオリン、トラヴェルソ、ヴィオラ・ダ・ガンバとの組曲(ト長調、イ短調、ヘ短調)が収録されている。裏方で支える他楽器との組曲(テオルボはもともと伴奏用楽器なので、そちらが本筋なのだけれど)もいいけれど、やはり渋いのはソロの曲。残響の具合もなかなかいい感じ。ライナーにはテオルボの概説(16世紀から17世紀初頭に活躍したピッチーニによる説明とか、単線であることやチューニングの特徴など)と、モンテイレ本人によるコメントが掲載されている。17世紀当時の弦がどんなものだったか本当のところはわかっておらず、とはいえ現代のリューテニストが使うナイロン弦はパワフルだけれどあまりに「flashy」(ケバい?)だとしている。また、ヴィゼーの曲の特徴は連続するメロディとシンプルな和音にあり(style briséを用いない)、当時の時代の先端に合わせようとするあまり、晩年のリュート曲は別の楽器用になっているほどだという。収録曲のうちソロでないものは、実はバスにハープシコードを加えることが奨励されているそうだけれど、モンテイレはあくまでテオルボでの伴奏を強行しているのだそうだ。また、ソロについてもタブラチュアがヴィゼー本人の手によるものでないとし、信頼性が薄いとの理由から一部で音を変えている、とも記されている。うーん、そのあたりの判断の是非は微妙なところ、か(というか、具体的なところが知りたい気がする)。

投稿者 Masaki : 23:05

2007年03月01日

ドレスデン聖十字架合唱団+ドレスデンフィル

昨日は久々のコンサートゴーイングで、ドレスデン聖十字架合唱団&ドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団によるバッハ『マタイ受難曲』。『マタイ』そのものも結構久しぶり。いや〜この演奏、なかなかの怪演(笑)。指揮は合唱団のカントール、ローデリッヒ・クライレ。モダンオケだったというのもあるだろうけれど、しなやかな音が印象的。各楽器のソロ部分も実に手慣れたものだった。合唱も、強弱のメリハリなど、その「演出」には伝統の重さを感じさせる。ソリストは、福音史家のテノール(マルティン・ペッツォルト)がエモーショナルな場面で数回変な響きを発したり(といっては失礼だが、制御しきれていない?)、アルト(ブリッタ・シュヴァルツ)が低い音になるとどこか声が細かったりと、ちょっとあれれ、という感じもしないでもなかったけれど、曲全体としては、合唱の人数のバランスもよく(かなり前聞いた聖トーマス教会合唱団のような大爆走もなく)、とりわけ後半のイエスの処刑場面に向かう盛り上がり、テンポ、そのクライマックスでの間合いはまさに絶妙の一言につきる。『マタイ』で終演後にブラヴォの声がかかるのは滅多にない気がするけれど、今回は盛んに出ていた(スタンディングオヴェーションも)。お見事!

投稿者 Masaki : 13:01

2007年02月23日

セファルディの音楽

アリア・ムジカの出世作だという『ユダヤ=スペインの宗教曲』(邦題:スペインのセファルディの音楽』(HMA 1957015)。これはまた、なんとも渋い一枚だ。ナイ(縦笛)、ウード、カーヌーン(琴の一種)などの民族楽器に合わせて、アラブ的な雰囲気を湛えた独特の声楽曲が朗唱される。これがまた、なんだか妙に耳に残るサウンドだ。セファルディ(イベリア半島のユダヤ系民族)の黄金時代は10世紀から12世紀にかけて(マイモニデスとかが活躍していた時期だ)。当時はユダヤの世俗曲にのせて宗教詩を歌うというのが主流だったそうで、それが後の16世紀後半ごろに、カバリストたち知識人層が定着するに及んで、観想へと向かう神秘主義の台頭にあって、声楽曲が高度に洗練されたものとなったのだという(ライナー)。ここに収録されているのはそういった洗練された声楽曲の数々。宗教儀礼に際して歌われるものなども含め、独特な魅力あふれる曲が満載だ。アルフォンソ10世のカンティガ集とか、モンセラートの朱い本に通じるものがあって、大陸的な情感が、ここでもまた貫かれている感じ。

ジャケット絵は1300年のセルベラの聖書(リスボン国立図書館所蔵)の挿画。このセルベラの聖書というのは、挿絵の豊富さで有名な中世スペインを代表するヘブライ語聖書だそうで、ネットにもその挿絵が転がっているので、ここにも挙げておこう。

cervera.jpg

投稿者 Masaki : 23:12

2007年02月15日

「アポロとダフネ」

SACDのハイブリッド盤ながら廉価だったので購入したヘンデルの『アポロとダフネ』(ムジカ・アド・レーヌム、イェド・ヴェンツ指揮)。これが意外にも良かった。収録曲は表題作(別名:「大地は解放された」)のほか、舞曲から構成された「『錬金術師』より、変ロ長調」も。いずれもヘンデルの初期のころの作品(1710年以前、つまり25歳までの作品だ)。ヴェネチアで歌劇『アグリッピーナ』で成功を収めた若きヘンデルが、ハノーファーで手直しし、ロンドンに到着して『リナルド』で成功するまでの期間に作曲されたものなのだろうということ。ライナーはもっと面白い仮説を紹介している。ヘンデルは当初、ジョージ1世としてやがて迎えられるハノーファー選帝侯のいわば「宣伝係」としてロンドンに趣いたのではないか、という話がそれ。そういう文脈に『錬金術師』の舞曲の華やかさが実に合う、とうわけか。この『錬金術師』、歌劇『ロドリーゴ』に使われていたものが、ベン・ジョンソン作『錬金術師』で使われたという、いわば「ロンドンバージョン」。どちらもヘンデルの突き抜けた華やかさ・明晰さが際立った曲。

投稿者 Masaki : 22:57